この記事は厚生労働省が医療広告(病院などの広告規制)の施策紹介として公開している資料「医療広告ガイドライン」「医療広告ガイドラインに関するQ&A」の主要なものに独自の解説を加えを再構成したものです。なお、以下は医療広告ガイドラインを網羅するものではありません。同ガイドライン、Q&Aの併用を推奨します。

〈関連資料〉厚生労働省 : 医療法における病院等の広告規制について

最新動向は下記ページで公開されている資料をご覧いただくとよいかと思います。

医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会

専門外来・特殊外来は広告可能でしょうか?

Q&Aでは「〇〇外来という表記は広告が可能な診療科名と誤認を与える」とされ広告不可とされているものの、ガイドラインでは「保険診療や健康診査などの広告可能な範囲であれば、糖尿病・花粉症・乳腺検査などの特定の治療や検査を外来の患者に実施する旨の広告は可能であり、専門外来に相当する内容を一律に禁止するものではない」とされています。
また、Q&Aには「患者などが自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトについては、広 告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能です」とあります。

従いまして「保険診療・健康診査の範囲内でウェブサイトが限定解除要件を満たしていれば広告可能」という解釈でよいと考えます。

【参考】 Q&A 2-6

センター表記は広告可能でしょうか?

「〇〇病院脳疾患センター」のように医療機関の正式名称と一つにつなげて、施設名称のように表記した広告は認められません。ただし「院内の診療体制や部門の名称として脳疾患センターがある」と表現することは禁止されていませんので、病院名と並べて表示しなければよい、という解釈ができるかと思います。院内の案内板に書くことも差し支えありません。また、法令や公的な認可がある場合は病院名に続けて広告可能です。

病院名の後に続けて施設名として表記可能なセンターの例 ※これ以外はNGという

  • (高度・地域)救急救命センター
  • 休日夜間急患センター
  • 総合周産期母子医療センター
  • 認知症疾患医療センター
  • 地域周産期母子医療センター
  • 不妊専門相談センター

【参考】 Q&A 1-13・5-5

広告できない診療科はありますか?

「総合診療科」は限定解除要件を満たせば広告可能ですが、「呼吸器科」「消化器科」「胃腸科」「循環器科」などは平成20年の法改正で広告ができなくなりました。「呼吸器内科」「消化器外科」などの表記に改める必要があります。看板など変更が大変なものについては、更新や差し替えをしない限りはそのままでよいという猶予措置が取られていますが、ウェブサイトは変更が比較的容易ですので、通報などを回避するためにも対応が望まれます。また、麻酔科を広告する場合には、麻酔科標榜医の併記が必要です。

【参考】 Q&A 3-3、3-4

【参考】 ガイドライン 第5-4(2)※広告できる診療科の一覧があります。

医薬品や医療機器の販売名を用いた治療は広告可能でしょうか。

厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」により、医薬関係者以外への広告はできません。医療法でも医薬品・医療機器の販売名については、広告できませんが、限定解除要件を満たした場合には、広告可能です。

製薬企業の民間ガイドライン「製薬協コード・オブ・プラクティス」とは考え方が異なり、前提的には医療ガイドラインの規制の方が緩めですので、情報の絞り過ぎに注意してください。

【参考】 Q&A 2-15

費用は記述すべきですか、必要ですか。

特に自由診療では治療費をめぐる金銭トラブルが多いため、受診や治療にかかる費用総額の目安を案内することが限定解除要件のひとつとされています。ただしガイドラインでは、金額の提示方法に関しては「品位」を求めており、ことさら強調する・前面に押し出すことは「慎むべきこと」と配慮を求めています。「無料健康相談」をうたうことも可能ですが、これについても無料を強調することは控えるべきです。

保険診療・自由診療を問わず、その治療を受けるのに必要な費用の一部のみしか表記していない場合(初診のみの費用で再診の費用などがないなど)には、有利誤認表示(景品表示法)と見なされる可能性があります。また、一定の条件を満たした場合にのみにその金額が適応されるといった場合に、条件を注釈として見落とす可能性があるほど小さい表記などにしている場合には、誇大広告と判断されることがあります。

【参考】 Q&A2-8

所属医師数は広告してもよいでしょうか。

「○年○月現在」と示し、常勤換算での広告が原則です。その後の入退職などで状況が変わったあとも変更を加えない場合には、誇大広告とされる場合があります。

【参考】 常勤医師等の取扱いについて

ビフォーアフター、治療の説明をするための写真掲載はできますか。

治療内容・効果の前後の写真いわゆるビフォーアフターの写真・動画・イラストなどは広告不可です。治療前のみ・治療後のみの写真などについても広告不可。

その写真などを補足する情報として、通常必要とされる治療内容、費用、リスク・副作用を付した場合は限定解除可能。ただし、このような補足情報をリンクを張った先のページへ掲載したり、極端に小さな文字で掲載したりという方法をとらないこととされています。

また、撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真などをウェブサイトに掲載し、その効果・有効性を強調することは誇大広告、あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真などは虚偽広告に該当します。

死亡率、術後生存率などは広告できますか。

医療機能情報提供制度において報告が義務付けられた事項以外は、対象となった患者の状態などによる影響も大きく、誤解を与えかねないため、広告不可です。

 掲載可能な例

  • 死亡率
  • 再入院率
  • 平均在院日数
  • 疾患別・治療行為別の平均在院日数
  • (全体の)患者数
  • 病床の種別ごとの患者数
  • 外来患者数
  • 在宅患者数
  • 分娩取扱数
  • 患者満足度
  • 妊産婦満足度

ドック・健康診断を広告することはできますか。

健診・検査の名称として対象者や部位を付記することは可能です。

広告可能な例

  • 乳幼児健診
  • 妊婦健診
  • 胃がん検診
  • 子宮がん検診
  • 肺がん検診
  • 乳がん検診
  • 大腸がん検診
  • 総合がん検診
  • 肝炎ウイルス検診
  • 特定健康診査

ドック関連で広告可能と明示されているものは「人間ドック」「脳ドック」のみです。広告不可の例として「遺伝子検査」「アンチエイジングドック」 「肌ドック」「美容ドック」 などは、現時点で医学的・社会的にさまざまな意見があり、広く定着していると認められないとして広告不可です。

「心臓ドック」「骨ドック」「血管ドック」について広告可否を明文化したものは現段階ではありません。実態は「心エコー検査」「骨塩定量検査」「脈波伝播速度」かと思いますし、「骨粗鬆症検診」は健康増進事業として厚労省が定めていますから、検査そのものというよりも「〇〇ドック」という名称が誤解を与える可能性を懸念するルールかもしれません。

なお、検査に通常要する期間を併せて示すこと「一日総合健康診査」「半日人間ドック」など、費用は広告可能です。

「虚偽広告」とはどのようなものですか。

虚偽広告 優良誤認表示 景品表示法 不実証広告規制

内容が虚偽にわたる広告、実際の提供している医療内容を正確に表現できていないものをいいます。

  • 絶対安全な手術(医学上ありえない)
  • どんなに難しい症例でも必ず成功します(医学上ありえない)
  • 一日で全ての治療が終了します(治療後の定期的な処置が必要な場合)

上記の場合、絶対安全な手術、必ず治ると確約できる傷病は、医学上あり得ないため、虚偽に該当します。また、証明できない事柄を広告している場合、景品表示法の不実証広告規制による優良誤認表示として取り扱われます。これに違反した場合、課徴金というかたちで制裁を受ける可能性があります。

比較優良広告(最上級の表現の禁止)とはなんですか。

比較優良広告

他の病院・診療所と比較して優良であることを訴求しているもの。施設規模、人員配置、提供する医療の内容などについて、自院が他の医療機関よりも優れている(大きい・多い・質が高いなど)といった広告はできません。

特に 「日本一」「No.1」「最高」「最多」などの「最上級表現」は、患者に誤認を与える可能性が高いので禁止されています。

ただ、「最上級表現」以外の比較表現は、求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できれば広告してもよいとされています。また、調査結果の出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期などの併記が必要です。

調査方法が自院に有利になるような一般的でない方法の場合優良誤認表示

  • 日本有数の実績を有する病院です
  • 県内一の医師数を誇ります
  • 最高の医療を提供しています。

比較優良広告(有名人との関連性の強調する内容の禁止)

比較優良広告」

著名人との関連性を強調するなど、患者に対してほかの医療機関より著しく優れているとの誤認を与える表現は、患者などを不当に誘引することから、比較優良広告として取り扱い広告不可です。

具体例

  • 芸能プロダクションと提携しています
  • 著名人も○○医師を推薦しています
  • 著名人も当院で治療を受けています

バナー広告やリスティング広告を出すことに問題はありますか?

ネット広告を出すこと自体に問題はありません。ただし、法的にはバナー広告やリスティング広告が単一の広告として取り扱われますので、自由診療の場合には治療にかかる費用などをそれらの広告内に記載する必要があります。大手の広告代理店やメディアであれば独自の審査などで違反を指摘されることも期待できますが、チェック機能がない媒体では法令違反状態で広告が掲載されているケースも散見されますので、自主的な判断が求められる点に注意してください。

医療機関のウェブサイト上の口コミ情報体験談・患者さまの声は、広告規制の対象でしょうか。

虚偽広告 誇大広告

患者の主観・伝聞であっても、治療内容や効果に関する体験談は広告禁止事項です。特に、当該医療機関を推薦するような感想だけを選んで掲載すると虚偽・誇大に当たるため、広告できません。

治療・効果に関わらないものは「医師がしっかり話を聞いてくれた」「看護師が親切」「受付や会計がスムーズ」などは広告可能です。

【参考】 Q&A 2-9・2-10・2-11

 誇大な広告(誇大広告)とはなんですか

誇大広告

施設の規模、人員配置、提供する医療の内容などについて、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告は禁止されています。

「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と、実際の内容に相違があることを常識的判断として言えれば足り、誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果までは必要としません。

  • 比較的安全な手術です(何と比較して安全であるか不明)
  • 伝聞や科学的根拠に乏しい情報の引用
  • 「○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります」
  • 「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください」

科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の症状に関するリスクを強調することにより、医療機関への受診を誘導するものは、誇大広告として取り扱うべきであること。

  • 「○○手術は効果が高く、おすすめです」
  • 「○○手術は効果が乏しく、リスクも高いので、新開発の○○手術をおすすめします」

科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の手術や処置などの有効性・リスクを強調して、有効性が高いと称する手術などの実施へ誘導するものは、誇大広告として取り扱うべきであること。

医師やパラメディカルの経歴・プロフィールに関連すること

資格や認定を広告できますか。

誇大広告 虚偽広告

厚労省の「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」で示されているものだけが広告可能です。下記の2019年1月の資料が最新です。前回から「日本精神神経学会 精神科専門医」が追加されました。

広告できる資格や認定

広告できない資格・認定日本専門医機構認定の専門医産業医特定行為研修を受けた看護師であること研修受講・講座修了をしたこと限定解除要件を満たした場合には上記も広告することができます。また、広告可能として認めるかどうかを検討予定とされています。
注意が必要なものとして認定団体の併記がない資格認定の広告、たとえば単に「○○専門医」では虚偽広告、「厚生労働省認定○○専門医」は誇大広告に該当のおそれがありますので、広告できません。

【参考】 Q&A 2-21・3-5・3-6・3-7

手術実績・症例数を広告できますか。

誇大広告

医師個人が行った手術の件数は広告できません。限定解除要件を満たした場合には可能ですが、求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。
当該医療機関で行われた手術の件数は、集計期間を明示した上で、広告可能事項で示した範囲で広告可能です。望ましい広告の方法として、下記が示されています。また、手術件数は総手術件数ではなくそれぞれの手術件数を、1年ごとに集計したものを複数年にわたって示すことが推奨されています。

【注意】過去30年分のような長期間の件数であって、現在提供されている医療の内容について誤認させるおそれがあるものについては、誇大広告に該当する可能性があります。

【参考】 Q&A 3-16・3-17

医師会・学会への所属を広告できますか。

現任の役員であれば広告は可能ですが、当該法人また学会のウェブサイトなどでその活動内容や役員名簿が公開されていることが必要です。会員であることは原則として広告できません。

医学博士であることを広告できますか。

略歴の一部として取得年、取得大学とともに記載することが望ましいです。なお、略歴とは、特定の経歴を特に強調するものではなく、一連の履歴を総合的に記載したものです。

【参考】 Q&A 3-15

採用情報・求人広告は医療広告に含まれますか。

労働基準法 職業安定法 男女雇用機会均等法

法律の目的は患者の受療行動に影響を与える情報提供のあり方を定めたものですから、それ以外の活動に関する情報発信は制限を受けません。ただし、労働基準法、職業安定法、男女雇用機会均等などに則った広告・広報であることが求められます。基本的なところでは、男女・年齢を限定するような求人募集はできない、最低賃金の改定に合わせて給与・時給の見直しを図るなどです。